戸建ての購入の仕方〜注文住宅と建売住宅〜

戸建ての購入の仕方には大きく分けて2つあります。

一つは、注文住宅。注文住宅を建てる人の多くは土地を持っており、その土地に家を建てます。住宅展示場に赴いたり、モデルハウスに行くなどしてハウスメーカーを選び、ハウスメーカーの人と相談して家を作っていきます。

もう一つは建売住宅。既に建っている家があり、その家をみて購入します。仲介業者に行くと紹介される戸建ての多くが建売住宅になります。

既に土地を持っていれば必然的に注文住宅になりますし、家を建てる土地を持っていない場合は、土地と建物のセットで売りに出されている建売住宅を購入することが多いでしょう。

 

注文住宅と一言で言っても様々です。テレビCMで目にするようなヘーベウハウス、積水ハウス住友林業といったハウスメーカーで建てることもできますし、地元の工務店でも注文住宅を建てることができます。建売住宅販売戸数が多い飯田グループホールディングスの各社でも注文住宅をやっています。値段も様々で、テレビCMで目にするようなハウスメーカーですと坪単価100万ぐらいはするので、30坪(約100m2)で3,000万ほどします。土地を持っていない場合は土地から購入することになるので、都心から通勤時間1時間ぐらいの場所で120m2ぐらいの土地の値段をざっくり3,000万円とすると、土地なしで大手ハウスメーカーで注文住宅を建てる場合はトータルで6,000万円ぐらいが最低の価格として見ておく必要があります。

一方でローコスト住宅と呼ばれる形で注文住宅を作ることもできます。この場合、坪単価は50万円ぐらいを目安と考えると良いと思います。ローコスト住宅でも工務店によってピンキリで坪単価30万〜60万ぐらいは幅がありますが、平均的にみれば大手ハウスメーカーの半額50万ぐらいを見ておけば良いと思います。そうすると、30坪で1,500万円ほどですから、土地価格と合わせて4,500万となり、この価格帯であれば、建売住宅と大差がなくなり、手が届くという人も多くなるのではないでしょうか。

ローコスト住宅において何が大手ハウスメーカーと違うかと言うと、大きくは実現できることの違いと考えると良いと思います。ローコスト住宅では、工務店によってある程度仕様が決まっていたり、デザイン性に制限があったりします。例えば、大きな窓を作りたいと思っていても、木造2階建で構造計算を行わない場合耐震性の観点から実現できない可能性があります。大手ハウスメーカーであれば、独自の工法(住友林業だとビックフレーム工法など)を用いたり、構造計算を詳細に行うことで複雑なデザインを可能にしていたりします。また、住宅としての性能や保障内容についても変わってきます。例えば、法律上、構造的欠陥に関する保障は10年間となっていますが、住友林業などは標準で30年、有償で最長60年までアフターサービスを受けることができます。これは非常に安心です。他にも、ヘーベルハウス旭化成ホームズ)のアフターサービスについても、有事の際(使っている部材に瑕疵があとから判明したなど)の連絡が速やかですぐに取り替えてくれたという話も聞いたことがあります。

 

注文住宅で家を建てる場合、間取り(プラン)から、外壁、クロス、設備、外構に至るまで様々なことを決めていく必要があります。契約してから実際に引き渡しを受けるまでは1年ぐらいは見ておいた方が良いのではないでしょうか。一方で建売住宅の場合、既に建っているわけですから、住宅ローンなどの手続きが終わればすぐに引き渡しを受けることができます。建売の最大のメリットはそのスピード感だと思います。例えば子供の学校の関係でこのエリアに3月までに引っ越さないといけないなどの状況があれば、スピード重視で決める必要がありますよ。そうした場合は建売住宅は住宅ローン審査がスムーズに進めは1ヶ月足らずで引き渡しを受けれますから早いですよね。

ただし、建売の最大のデメリットは完全に自分たちの希望する物件に出会うのが難しいと言うこと。間取り自体に問題はなくてももう少し華やかな壁紙が良かったとか、キッチンの高さが低い方が良かったとか、洗面台を玄関近くにあった方が良かったとか理想としていることは様々あるはずです。暮らしていく中でどうしても我慢していかなければならない部分になります。

 

それでは、建売はどう言ったところが販売しているのでしょうか。建売住宅で一番多いのはなんと言っても飯田グループホールディングスの会社でしょう。飯田グループは、「すまいーだ」のCMでおなじみので、分譲戸建て住宅のシェアが3割で日本ではトップのシェアとなります。飯田産業東栄住宅タクトホームアーネストワン・一建設・アイディホーム持株会社でその他にも仲介事業を手掛ける住宅情報館なども飯田グループです。飯田グループは、「誰もが当たり前に家を買える社会にしたい」というのをミッションに掲げており、坪単価50万円ほどの戸建てが多い印象で、多くのサラリーマンや公務員が手を出しやすい価格帯の物件が多いです。

その他にも地元の工務店が建売を販売していたりもします。この場合は、一般的なローコスト建売と大差ない印象です。一建設と地元工務店のどちらが建てたかというのは一瞥してわからないのではないでしょうか。

そしてもう一つ分譲建売で目を引くのがブランドのついた建売住宅でしょう。野村不動産プラウドシーズン、三井不動産レジデンシャルのファインコート、小田急不動産のリーフィアなどが大手ディベロッパーのブランドを冠した建売住宅となります。こうした物件の特徴はなんといっても統一された街並み。これらのディべロッパーの多くはマンションなども手がけ、街並みを作ることに長けています。家だけでなく、植栽、交差点、道路をレンガ調にするなど、美しい街並みを作り上げます。大きな分譲地だとそのエリア内に複合商業施設(スーパー、100円均一、クリニック等)も設けます。その一角だけ雰囲気が違います。ブランド分譲建売の価格はと言うと、飯田グループのような家と比べると少し高いです。ですが、内装や設備もちょっとずつ上のランクのものを採用していたり、デザイン性に優れていたりと注文住宅のように拘れないけど、ブランドが好きと言う人にはおすすめと言えます。

 

suumoやHOMESを見ていると「フリープラン」「自由設計」という物件を見たことがある人もいるかもしれません。「フリープラン」「自由設計」とはどういった物件なのでしょうか。「フリープラン」「自由設計」の物件では、まだ家が建っておらず、間取りや内装、設備などをある制約の中で建主(施主・買い手)が自由に選ぶことができます。どこまで選ぶことができるかは物件にもよるのですが、間取りから自分たちの意向を反映することができることも多々あります。しかし、基本的な仕様は決まっているため、例えばフローリングの床材は「このメーカーのこのシリーズの中からしか選べません」と言ったことが往々にしてあります。ただし、同じメーカーであれば一部屋だけ別の種類を選ぶことも可(別途オプション)といったこともできることもあります。浴室もPanasonicからしか選べませんとか、PanasonicLIXILしか選べませんといったメーカ指定があり、メーカーの同じシリーズの中では設備をアップグレードできることが多いようです。

すなわち、「フリープラン」「自由設計」の物件では、注文住宅ほどじゃないにしろ自分たちの意向を反映した間取り、設備を実現できることができるわけです。注文住宅では、選択できる範囲が幅広く、一つ一つ自分たちで意思決定していかなければいけません。「フリープラン」「自由設計」では仕様が決まっているので、選択肢が限られている中から選ぶことになるので、建主の負荷は注文住宅ほどではありません。とは言えそれでも間取りを自分たちで考えなければいけなかったり、壁紙の選択、設備の選択、階壁の選択、外構の選択など建売では経験できない家を建てるプロセスを経験することができます。注文住宅ほどのコストをかけれないが、家づくりを経験したいという場合は、「フリープラン」「自由設計」はおすすめの物件と言えると思います。ただし、「フリープラン」「自由設計」の物件は多くなく自分たちから探しにいかないと希望の場所の物件と巡り合えないと思います。そしてこうした物件は、土地を見て購入するか否かを判断するため、足がはやい物件と言えます。探し方で紹介した地元の不動産屋さんにいくなどして精力的に情報収集する必要があります。

「フリープラン」「自由設計」の契約方法としては、まず土地の契約を行います。つまり、「建築条件付き土地」を購入する契約を結び、「建築請負契約」を結ぶことになります。そしてそれぞれに対して費用が発生するわけです。場合によっては、土地の契約の段階で土地代を振り込み、その後建物の代金を払うということもあります。すでに建物が立っている建売住宅であれば、土地と建物の代金を一括で支払うので住宅ローンの契約もシンプルですが、土地代を先に払わなければいけない場合、最終的な住宅ローンの前につなぎ融資という形で銀行からお金を借りる必要がでてきます。つなぎ融資の金利は住宅ローンよりも高いですから、その部分の費用が余計にかかってしまいます。しかし、売主によっては、契約上は別々だが、土地代と建物代は引き渡しの時に一緒でも大丈夫ということもあります。あるいは、売主が「フリープラン」「自由設計」の形態で住宅を販売していると知っている銀行であれば、つなぎ融資なしでも住宅ローンがおりる場合もあると聞いた頃があります。土地代、建物代、どのように支払うかは売主によって変わってくるので契約前に確認しておいた方が良いでしょう。

 

建売住宅に関しては、既に建物が立っている建売、建主(施主)の意向を反映できる「フリープラン」「自由設計」の二つについてお伝えしてきました。そして、もう一つ建売の場合は建てる前に契約するという選択肢があるのをお伝えしたいと思います。

建売なのに建てる前に買うのって勇気がいるのではと思う方もいるかもしれません。確かに賃貸住宅で内見せずに契約を決定するのには勇気がいります。ただし、新築戸建てであれば十分な準備を行えば、心配事はほぼゼロになります。むしろメリットの方が多くあります。新築戸建てといっても、基本的な内装・設備は同じ売主であれば大差はありません。つまり、既に立っている他の建物を見て、外観・内装・設備を把握することができるわけです。同じ時期に建てたのであれば仕様が大きく変わると言うことはありませんから、十分に具体的なイメージができます。しかも、売主によっては、早めに契約してもらうことで、設備を変更できたり、壁紙を変更できたり、外壁を変更できることを謳っているケースもあるのです。例えば、飯田グループホールディングス傘下の東栄住宅では、以下のようにホームページ上で早期契約のメリットについて謳っています。

家を建て始める前にご契約いただくことで、フロアやドアは
もちろん、家の外観や玄関の扉など、無料(※1)でお気に入りのカラーに変更できます!

(※1)内容によっては有料になる場合があります。詳しくは営業担当者へお問い合わせください。 

www.e-blooming.com

 

間取りについてはそこまでこだわりはないけど、壁紙を一部アクセントにしたい、キッチンの高さを低くしたい(標準は85cm。身長が低い人だとちょっと高く感じられ、身長が高い人だと引く感じられます)といった要望を反映することができるわけです。キッチン高さなどは、毎日使うところですから、自分にあった高さにできることは大きなメリットですよね。建売住宅であっても、引越し予定の十分前から情報収集することで、自分の好みの内装や設備に変更することができるのが建てる前に購入するメリットです。ただし、全ての売主がこうした要望を聞いてくれるわけではないので、事前に契約前にどこまで変更が可能なのかを確認すると良いでしょう。

 

以上、注文住宅と建売住宅の違いについて述べてきました。これらについて表形式でまとめたいと思います。

  注文住宅(大手ハウスメーカー 注文住宅(ローコスト) 建築済み建売(非ブランド) 建築済み建売(ブランド) フリープラン 建築前建売
間取り × × ×
デザイン性 ×〜○ ○〜△ ×〜○
設備
相談

 

間取りの自由度は大手ハウスメーカーがが良いでしょう。ただし、ローコスト住宅やフリープランの物件でも自由度は高いです。

デザイン性については、注文住宅が自分たちの好みにあったデザインで建てられるでしょう。ただし、外壁の色味や壁紙などはローコスト住宅やフリープランでも対応可能ですし、建築済み建売でもブランドものは好みに合えば良いと言えます。

設備(キッチン、バスルームなど)は注文住宅では選択肢が広く自分たちの好きなものを入れることができますが、フリープランや建築前建売などでも制限の中でグレードをあげることが可能です。

設計時に相談できるかどうかについては、注文住宅であれば、設計士だけでなく、壁紙や建具を選ぶにもインテリアコーディネーターの人と相談することができたりしますが、フリープランではそうした人がついていないことも多いです。したがって、自分でショールームに足を運んだり、サンプルを取り寄せるなどして決めていく必要があります。